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転じという概念

フリースタイル空手概論

【転じ(Turnaround)とは?】

転じとは、戦い(戦闘)の勝利を決定する局面に内在する、戦いの原理のようなものです。私は、戦いの局面において、より善く戦う者の戦術には、転じの原理が存在すると考えています。勿論、私の経験からくる仮説ですが。

私は、それを「転じ(Turnaround)と名付けました。その定義は、「対手の攻撃を無力化し、反撃の効力を最大化する状況をつくること」となります。言い換えれば、自他の攻防の間に生じる「機」を生かすことです。

【戦術が多様で複雑】

フリースタイル空手という総合武術・武道スポーツは、戦術が多様で複雑になります。なぜなら、相手を打つ、蹴る、倒す(投げる)ことが許されるからです。また、他の格闘技スポーツは、戦いの局面や攻撃技術を限定し、戦術の幅を制限しています。勿論、フリースタイル空手も関節技やグランドの攻防(戦術)を制限しています。それは安全性を確保するためのものです。安全性の確保がなぜ必要かと言えば、答えは簡単です。

【優れた技術の創出を目標】

それは、フリースタイル空手はスポーツとして、格闘技を楽しみながら個々人の心身を強化することを基本としています。同時に、優れた技術の創出を通じた、道理の体得により、有為な人材の育成に武道を役立たせることを目標としているからです。ゆえに、ある程度の安全性の確保が必要です。勿論、本当に優れた心技体は生死の境を体験したものでなければ身に付かない、と容易に想像できます。しかしながら、それは極々少数の者に許されないことなのです。また、私の感覚によれば、生死を安易に口にする者は怪しい。また、その領域が武道家と名乗る人達の隠れ蓑になっているような気がします。私は、この部分について、これ以上、公には言及しません。

【戦術の限定は、戦術や技術を研ぎすます】

さて、「戦い方、戦術の限定は、技術を研ぎすます」と私は考えます。
例えば、ボクシングやレスリングはその典型です。格闘競技のルールという観点から見たボクシングは、突き(パンチ)による頭部と上体への打撃という戦術に特化したスポーツなのです。また、技と戦術を限定するがゆえに、その技と戦術が優れているのです。また、レスリングは組み合いによる相手の支配という戦術に特化したスポーツです。ボクシング同様、その技と戦術が優れているのは、戦術の幅を明確に限定するがゆえです(同時に技術評価の基準が明確である)。補足を加えれば、ボクシングもレスリングもその優れた戦術を駆使するための身体能力が研ぎ澄まされています。

【空手の特異性の第一は】

視点を変えて、空手はどうでしょうか。空手は突きや蹴りに技を限定・制限しています。本来ならば、ボクシングやレスリング同様、優れた戦術が誕生しなければなりません。しかし、安全性を確保するために、攻撃方法にも限定を加えることによって、戦術が限定されています。ゆえに、優れた戦術が生まれにくくなっているように思います。

私が考える、空手の特異性の第一は、ボクシングやレスリングとは異なる間合い(距離)からの攻撃だと、私は考えます。言い換えれば、中間や遠間からの攻撃です。勿論、古流の空手に見られる、接近戦での打撃技も空手の特異性の一つだとは思います。しかし、中間(ミドルレンジ)や遠間(ロングレンジ)における攻防を行うための機動力が空手と他の格闘競技との差別化になると思います。また、その機動力や技術は、ナイフなどの小武器などに対応する護身術の基盤となると思います。しかしながら、そのような機動性と攻撃技術の片鱗を、フルコンタクト空手競技では見ることができません。むしろ寸止めと言われる、伝統空手の組手競技に、その片鱗が見られるといえば、言い過ぎでしょうか。そのようになったのは、蹴り技の攻防から逃れるための戦術としての接近戦を多用するからだと推測します。また、一撃必殺と言いながら、急所への打撃技や頭部への打撃に対し限定を加えているからでしょう。さらに言えば、多少の打撃をもらっても、防御技術の未熟さとは考えないことや相手の攻撃と防御の間に一撃必殺の機があるということを理解していないからでしょう。

極論すれば、突きと蹴りなどの打撃技格闘技の特性を充分に活かしていないということです。ここは丁寧に話さなければならないところですが、ここでは簡単に説明しました。

【組手法の改善のために】

その傾向に気づき始めた空手指導者達は、組手法の改善のために、キックボクシングのように頭部打撃をフルコンタクト空手に取り入れたりしています。それらの試みを、私は否定はしません。また、安易な接近戦を反則とする、組手競技のルール改正を行なう流派も出てきました。私は、そのような方法も悪くないと思いますが、優れた格闘技術の創出を目標とする格闘競技を考えるならば、少々難があるように思います。なぜなら,優れた格闘技術の創出を目標とするなら、仕組み(システム)として、自然に理に適わない状況が生まれにくくするようにした方が良いと考えるからです。つまり、ある戦術の選択をすれば、それが不利になるという要素があれば、その選択は安易な逃避的かつ偽装的な攻防ではなくなります(現在のフルコンタクト空手競技には偽装的攻防や無駄な攻防が多すぎる)。つまり、リスクをとった上での攻防の選択とは、すべて積極的な攻防手段の選択となるのです。そうなれば、その競技における技術の応酬が、すべて十分に意味のある攻防となります。ただし、あれをしてはならない、これをしてはならないと注文を付け過ぎると、選手の動きに自由度が奪われ、より善い変化と優れた感覚が生まれなくなります。ゆえに、接近戦も遠間の攻防も有効とし、それぞれの間合いでの有効な技を明確に評価する基準を設ければ良いのです。

【フリースタイル空手は】

フリースタイル空手は、先述したように、安全性を確保しながら、あらゆる年代の愛好者に反復練習を可能とすることを目標としています。ゆえにグローブを使用した、突きにによる頭部打撃を採用するのではなく、フルコンタクト空手を基盤にします。しかしながら、近間では、組み合っても良いという、ある意味、当たり前の条件を設定します。

そのことにより、空手家の心身に、優れた間合い感覚、体捌き・運足の技術が引き出されるのです。本来、近間での攻防は、掴んだり、組んだりするのが自然です。また、接近戦における、組み合いへの対応という戦術と技術を空手に加えれば(本来の空手では当たり前)、護身武術としての伝統空手が復権します。突き蹴りのみが空手だと理解している人達は戸惑うかもしれませんが、護身に空手を役立たせたいと考えるならば、多様な格闘状況を知らなければならないと思います(もちろんすべてを知ることはできませんが・・・)。

但し、すべての格闘局面を組手競技で行うとなると、「打撃技の攻防」「組技の攻防」「寝技の攻防」など、局面が多過ぎてスポーツとしては過激になります。ゆえに立ち技での格闘局面に限定しました。

しかし、フリースタイル空手競技には否定的意見があります。頭部打撃技を限定し、組討ちを認めれば、打撃技が得意な者に不利だという意見です。その意見には一理あります。ゆえに柔道の寝技の攻防のように組み合いが許される時間に制限時間を設けました。

柔道は立ち技からの投げと倒されてからの攻防を、武術として重要とし、それら両方の技を生かしました。ただし、打撃技を禁じたのです。フリースタイル空手は、寝技を禁じ手としましたが、離れての打撃技と接近しての組討ちの両方の技を生かすのです。

また、極真空手を代表とするフルコンタクト空手の蹴り技は、かなり強力な打撃技、攻撃技です。組討ちの状況と技術を理解し、打撃技と組み合わせて、新しい打撃技を生み出せば、かなり強力な格闘技術が創出出来ると確信しています(時間がかかるかもしれませんが)。

さらに補足を加えれば、戦術の範囲を広げ、戦闘局面の種類を増やせば、当然、組手が複雑になります。しかし、それを我慢して、受け入れることができれば、組手(戦い)がチェスのような戦略ゲームに近づいていくのです。はじめに基本技の理解と、それを競技者が身につけることができれば、そんなに難しいことではないと思います。

もし、フルコンタクト空手競技が、以上のルール変更を受け入れることができれば、これまでの技術プラス、新たな戦術が誕生するでしょう。また、競技者に戦略的観点が生まれます。その戦略性は、観る者も納得するはずです。

そこで初めて、人間教育に役立つ、ストラテジック・コンバット・スポーツ(戦略的格闘技スポーツ=武道スポーツ)が誕生するのです。

2016/9/2 一部加筆修正

【補足・蛇足】

蛇足ながら、近間・接近戦での攻防では、金的や目つきなどの急所攻撃をすれば良いというように短絡しないで下さい。そのような考えは、奇襲・不意打ちという次元であり、緊急の護身術としては考えなければなりませんが、よくよく考えて下さい。それを安易に持ち出すと言うことは、小武器の使用も有りということと同次元だと私は考えます。そうなると、ルールを限定し、多様な戦術に対応するための能力や、格闘の基盤となる身体能力を高めるということから離れていきます。

異論もあるとは思いますが、私には論争する気もありません。なぜなら、そのような武術の流派もあっても良いと思うからです。しかし、私は公ではそれを行ないません(裏でやるかもしれませんが・・・)。

話を戻せば、なかなかフリースタイル空手の趣旨を理解していただけないようですが、もう少しだけ頑張りたいと思います。

 

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