
[第53号:2021-10-1]
【本号の内容】
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- 巻頭コラム:打つと当たるの違い~拓心武術の戦術理論 その1
- 昇段審査の結果発表
- 第10回月例試合の報告
- 今月の映像教本:下段スネ受けと中段スネ受け(更新しました)
- 特別映像教本:カーフキックへの対応
- 編集後記 第53号:組手修練において意識しなければならないこと
- 10月中旬にデジタル空手武道教本のPWが変更になります。新しいPWはメールにてお知らせします。お気をつけください。
- デジタル空手武道通信・54号の発刊は11月の初旬の予定です。
巻頭コラム:「打つということ」〜打つと当たるの違い(拓心武術の戦術理論)
【TS方式の試合を行えば、必ず一人ひとりの可能性を開拓する能力が向上する】
拓心武術とは、私が極真空手を基盤に様々な武術、格闘技を取り入れ編集した武道修練法である。その内容は、打撃技の活用を主とする拳術、組技や逆技の活用を主とする柔術、その他、小武器を活用、かつ対応する無刀術に分けられる。
その拳術の修練法の一つがTS方式(ヒッティング方式)の組手法である。その修練を一般稽古に採用して、早くも1年を経過しようとしている。
先日、私の道場では第10回・月例試合が行われ、多くの少年達が新しい組手法の為合い(試合)を行った。そのほとんどが初試合だったが、一所懸命に組手を行う姿にある確信を持った。
それが「どのような確信か」と言えば、「TS方式の試合を行えば、必ず一人ひとりの可能性を開拓する能力が向上する」ということである。ただし、その能力の獲得の仕方が理解されてないようにも感じた。
【可能性を開拓する能力】
ここでいう私が考える「可能性を開拓する能力」とは、子供が言葉を覚え、言葉を使い、他者とのコミュニケーションを行う能力と同様のものである。また、その能力の獲得によって、人間は自己をより良く活かす方法を体得し、かつ他者を活かす方法を理解していくということと言っても良い。
そのように言えば、多くの人に理解されないのはわかっている。だが、あえていうのは、私が説明が下手なのと、そのことが私の一番伝えたいことだからである。
補足すれば、TS方式の組手は、技を乱暴に使い、相手を破壊するような組手を基本としない。TS方式の組手法の目指すところは、言葉を使って相手と正確に議論するような組手をおこなうことである。言い換えれば、相手の技を受け止め、かつ、それを契機に自己の技を活かす能力を体得することである。
【予測力】
その核心を述べるには、もう少し時間をおきたいが、今、仮に予測力と言っておこう。その予測力とは、相手の技(言葉)の意味をほんの1~3手読むだけの能力である。だたし、その能力を身体で表現・発揮するには、相手との身体を使ったやりとり(対話・組手)の訓練が必要である。その訓練を意義あるものとするには、組手修練法に自己の脳と身体により良く戦うための神経回路を構築するような必然性がなければならない。また、その回路を構築するための強い意志が必要である。
今、私が考えている武道とは、格闘技の試合のような、「誰が一番強いか?」というような見せ物的な価値と一線を画すことになるだろう。また、幻想と権威主義により偏向していった空手道を乗り越え、新たな価値を発見するに違いない。
その価値は、身体的な才能の有無に関わらず、その修練を行う者全てに益をもたらす。また、学術、文学、芸術の分野とは別の新しい領域で、各々の心身の可能性を拓くようになる。だが、その目的を実現するには、リーダーに高い理念、哲学が必要である。言い換えれば、高い志を有する武道人が必要になる。これ以上は、私の妄想ととられるに違いないのでやめておく。
【打つということ〜拓心武術における〈打ち〉について】
さて、現在、拓心武術の戦術理論を少しづつまとめている。今回はTS方式における技ありの基準である、「拓心武術における〈打ち〉」について述べたい。
TS方式の組手では、決められた目標(ヒットポイント)に正確に技を当てることによって「技あり」を奪い合う。ただし、試合規程では「クリーンヒット」と認めなければ「技あり」とならない。
クリーンヒットとは、ただ目標に攻撃技を当てるのみならず、攻撃技をなるべく目標の中心の1点近くに正確に当てることが大事である。さらに、その攻撃技を繰り出す際、踏み込み、重心移動、気合(発声)が伴っていることが必要だ。
ゆえに、TS方式の組手試合では、攻撃技が当たっても技ありにならないことがある。そのことを目にした人は、「なぜ、今の攻撃が技ありにならないの?」と思われるにちがいない。
だが、拓心武術の修練法の一環であるTS方式の組手試合では、「当たった」「当てた」ということと「打った」「打たれた」ということは別物だとしている。さらに誤解を恐れずに言えば、拓心武術の修練では、技を「打つこと」を目指す。必然として「打つこと」を理解していない「当てる」は「当てっこ」となるに違いない。
【本当の勝ち(勝利)】
ここで一旦整理すると「正確性」「踏み込み」「重心移動」「気合」の全ての要素を含み、かつ能動的な攻撃が「打つ」ということである。だが、現実はそのような技術・技能を表現・発揮することは容易ではない。ゆえに、前述した要素の一つぐらいは不十分であっても「技有」と認めるようにしている(現時点では)。なぜなら判定をあまりに厳しくすると、前進(普及・発展)が困難になると思うからだ。もちろん、2つ以上の要素を欠き、能動的ではない攻撃は「技有」とは認めない。
また、拓心武術の修練は、攻撃技のみならず防御技を組み合わせ、新たな技を変化する中で創出する能力を体得することを目指す。そのために、局面において「勝ち」を制し、「敗け」を退けることを目指す。言い換えれば、「勝ちを創出し敗けを無くす道」が拓心武道であり、その技術と技能を体得する手段が拓心武術だ。それゆえ、攻撃技を当てる技術・技能の体得のみならず、相手を確実に制する技術・技能の体得を目指すのだ。さらに言えば、防御技を活かし、かつ攻撃技を活かす技術・技能を能動的に発揮して生きることが、本当の勝ち(勝利)なのだと私は考えている。ゆえに、単なる相手に当たっただけの打撃技は「打った」とは認めず、ただ「当たった」として判定し、「技あり」とはしないのである。
そういう意味では、試合という手段も、それだけでは十分な修錬とはなり得ない。ゆえに試合結果に一喜一憂してはならない。あくまでも、試合とは、試合結果の底辺(裏面)にある、見えない領域を考究する手段だと心得てほしい。
【宮本武蔵の兵法】
私の考えと通じる思想として、宮本武蔵の五輪書に「打つと当たるの違い」という項がある。
今回はTS方式の組手法における戦術理論について書いた。途中、武蔵の思想を挿入したが、私の考えと武蔵の考えには相違があるかもしれない。だが、武蔵の述べていることは、より深い視点から「太刀が当たる」という現象について考究していること。また、能動性の有無が卓越した技能を発揮するために必要だと考えている点では、私の考えと一致する。
我が門下生においては、今回、デジタル空手武道教本にアップした試合の映像を見て、しつかりと吟味してほしい。より詳しい、指導はこれから追加する。現時点では抽象的な言説となっているが、より具体的な説明と指導法を確立したい。もう少し待っていて欲しい。同時に、私の説明を待つのではなく、自らが能動的に私の戦術理論の理解に務めてほしい。
- 続く:その2(補足)あり。
- 本コラムは、増田章の身体で考える(アメーバブログ)にも掲載しました。
参考文献
「対訳 五輪書」現代語訳:松本道弘 英訳:ウイリアム・スコット・ウィルソン
講談社インターナショナル
打つと当たると云事:原文
打とあたると云事、打と云事、あたると云事、二ツ也、打と 云心は、いづれの打にても、思ひうけて慥に打也、あたるは、ゆきあたるほどの心にて、何と強クあたり、忽、敵の死るほどにても、 是は、あたる也、打と云は、心得て打所也、吟味すべし、敵の手にても足にても、あたると云は、先、あたる也、あたりて後を、 つよくうたんためなり、あたるは、さわるほどの心、能ならひ得 ては、各別の事也、工夫すべし
打つと当たるということ:現代語訳
打つと当るということ、 打つということと、当るということは別物である。
打つと いうのは、 どのような打ちかたにしろ、心に決めて、確実に打つことをいう。当るというのは行き当るといったほどのものであり、とても強く当って、 たちまち敵が死ぬほどであっも、これは当りにすぎない。打つというのは、心に決めて買うことである。その点を研究しなければならない。
敵の手でも足でも、当るというのは、 まず当ることである。 当ったあとに、強く打つためである。 当るというのはさわるというほどのことである。よく習得した ならば、これらはおのおの別のことである。工夫するように。
昇段審査の報告
第10回 月例試合の報告
全試合映像
今月の映像教本
昇級審査を受審する人は、必ず確認してください。また黒帯及び指導員は稽古法を理解してください。
特別映像教本〜カーフキック粉砕
- カーフキック粉砕
増田章のスピーチ
TS方式組手法の戦術理論について
2021年10月のイベント予定
- 第11回 月例試合の募集:10月31日(日)→参加案内はこちらから
- 昇級審査会の開催:11月7日 申し込み受付中
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第53号 編集後記
巻頭コラムの補足を以下に掲載したい。現在、TS方式組手法の稽古方法が進化している。同時に、これまで明確にしてこなかった増田章の戦術理論を明確に表現できるようになってきた。あとは、時間と体力との戦いである。我が門下生に対し、十分な指導法を確立するつもりであるが、現在はどんどん先へ急いでいる。その感覚と理論(考え方)の隔たりは通常の稽古をしていたのでは、絶対に縮まらないに違いない。
私は、私の身体がダメになり、寿命が尽きても、我が門下生がその志を継いでくれるよう願っている。それゆえ、その感覚の隔たりを通常の稽古によって近づけるために、修練体系の確立を急いでいる。つまり理論化と稽古法の確立を急いでいる。だが、却ってその隔たりが大きくなっているかもしれない。
要するに、私がどんなに考究と実験を続けても、その修練体系を門下生が学ぼうとしないならば、何も伝わらないだろう。もちろん、個々人で何かを得ているかもしれない。だが、それらは私が構想しているものの一つのピースに過ぎず、そこから本体を想像することは困難に違いない。言い換えれば、私の構想を理解するには、その構造を理解したほうが早い。さらに言えば、その構造を理解するために稽古をするのみならず、その概念を理解していくのである。
ヒッティングイメージ映像
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