武道人(Budo-Man)の七つの行動指針
武道を、日々の生き方へ
IBMA極真会館では、武道を単に技術を習得するためのものとは考えていません。
武道の修練を通じて心身を磨き、そこで得た技、精神、判断力、智慧を、自らの人生や他者との関係、そして社会の中で活かしていくことを目指しています。
そのような生き方を実践しようとする者を、私たちは**「武道人(Budo-Man)」**と呼びます。
武道人とは、単に武術の技を学ぶ者ではなく、心・技・体を統一し、自己を高めるとともに、他者の成長や幸福にも寄与する人格者を目指す者です。
IBMA極真会館の理念、修練と修道、そして拓心武道哲学を、日々の判断と行動の中で実践するための道標として、次の「七つの行動指針」を掲げます。
一、自らの心を磨く覚悟を持つ
解説
私たちの行動と、その結果は、しばしば「心の在り方」と深く結びついています。
より良い生き方を求めるのであれば、まず自らの心を省み、正し、磨き続ける覚悟を持たなければなりません。
「心を磨く」とは、単に感情を抑えたり、強い精神力を身につけたりすることだけを意味するものではありません。
それは、自分自身の内面と向き合い、人として何が善いことなのかを感じ取り、それを判断し、実践するための心の働きを高めることでもあります。
IBMA極真会館では、その働きを**「良心」、または人としての善なる知恵と能力である「良知良能」**として捉えます。
武道人とは、自らの内面と静かに対話し、良心の働きを高め続けようとする者です。
二、すべての「つながり」を尊重し、生かす
解説
この世界は、人と人、事と事、そして人と物事が相互に関係し、支え合いながら成り立っています。
私たちは決して、自分一人の力だけで生きているわけではありません。
家族、仲間、師、弟子、友人、仕事、地域、自然、さまざまな出来事。
人生の中で生まれる多くの「縁」や「つながり」が、互いに影響し合いながら私たちを形づくっています。
武道人は、その関係性の価値を深く理解し、それを自分だけの利益のために利用するのではなく、互いを活かす方向へ結びつける智慧を養います。
つながりを尊重し、その関係をより良いものへ育てることも、武道修行の一つです。
三、自他の立場を共に理解するよう努める
解説
物事を一方的な視点からしか見ないとき、私たちの判断は偏りやすくなります。
自分の立場だけから見れば正しいと感じることでも、相手の立場から見れば、まったく異なる意味を持つことがあります。
また、その時点では正しいと思える判断も、時間が経過することによって評価が変わる場合があります。
真に適切な判断とは、一つの視点だけではなく、多面的な理解と、時間の経過をも見据えた広い視野の中から生まれるものです。
武道人は、自分自身の立場を理解すると同時に、相手の立場にも目を向けます。
自分と他者、その双方を理解しようとする努力が、より良い判断と行動につながる。
その姿勢を大切にします。
四、自己のためのみならず、他者のためにも尽くす
解説
自己の利益だけに囚われた行動は、しばしば視野を狭くします。
武道によって自分を高めることは大切です。
しかし、自分だけが良くなればよいという考えにとどまるならば、武道を人間形成の「道」として学ぶ意味は十分ではありません。
「自分も良くなり、他者もまた良くなる」
という視点に立ったとき、私たちの判断と行動は、より広く、より豊かなものへと変わります。
他者の成長や幸福を願い、自らが持つ能力や経験を、そのためにも活かす。
自己を高めることと、他者を活かすことを切り離さない。
そこに武道人としての重要な生き方があります。
五、常に思考を吟味し、最善を選び取る
解説
人生は、無数の選択の積み重ねによって形づくられます。
私たちは、環境や状況から大きな影響を受けながら生きています。
しかし、その中で何を考え、どのように判断し、何を選択するのかということもまた、自らの人生を形づくる重要な要素です。
日々の小さな選択が、やがて大きな結果につながります。
だからこそ武道人は、自分の考えをそのまま正しいと思い込むのではなく、常に自らの思考を吟味します。
別の見方はないか。
より良い方法はないか。
自分だけでなく、相手にとっても良い選択になっているか。
短期的な利益だけでなく、長期的に見ても良い判断なのか。
こうした問いを持ち続け、より善い道、より適切な道を選ぶ努力を惜しまないことが大切です。
六、目標を持ち続ける
解説
人は皆、意識するしないにかかわらず、心の中に「こうありたい」という自己像を持っています。
武道人としての成長とは、その「あるべき自己像」に少しずつ近づこうとする、継続的な意識と行動の積み重ねでもあります。
技術を高めたい。
より強くなりたい。
人として成長したい。
誰かの役に立ちたい。
社会に貢献したい。
目標の形は、それぞれ異なっていて構いません。
大切なのは、自分がどこへ向かっているのかを見失わないことです。
明確な目標を持ち、それに向かって歩み続ける限り、人は年齢にかかわらず成長することができます。
武道人は、目標を持ち続け、その目標を時には見直しながらも、歩みを止めない者です。
七、主体的に行動する勇気を持つ
解説
人生は、自らの選択の連続です。
そして、その選択の結果について、最終的には自らが責任を負わなければなりません。
判断を常に他者に委ねることに慣れてしまえば、自分の人生でありながら、他者の判断に振り回される生き方になってしまうことがあります。
もちろん、人の意見を聞くことは大切です。
経験者の助言を受け、他者の考えを理解し、自分自身の判断を修正することも必要です。
しかし、最後に判断し、行動するのは自分自身です。
武道人は、他者の意見を尊重しながらも、自ら考え、自ら判断し、良心に従って主体的に行動する者です。
そこには、
自らの人生を、自らの責任において切り拓いていく
という、強く静かな決意があります。
七つの行動指針が示すもの
この七つの指針は、それぞれ独立した徳目ではありません。
互いにつながり合い、一つの生き方を形づくしています。
心を磨く。
つながりを活かす。
自分と他者の双方を見る。
自己だけではなく、他者のためにも尽くす。
思考を吟味し、より善い道を選ぶ。
目標を持ち続ける。
そして、勇気をもって行動する。
この積み重ねによって、武道で学んだことが、道場の中だけのものではなく、人生そのものへとつながっていきます。
武道人とは
武道人とは、完成した人間を意味する言葉ではありません。
自らの未熟さを知りながら、それでもより良い自分を目指して学び続ける者です。
技を磨くだけではなく、心を磨く。
自己を高めるだけではなく、他者を活かす。
強くなるだけではなく、その強さを何のために使うのかを考える。
そして、武道で学んだことを人生のさまざまな場面で実践していく。
IBMA極真会館が目指す武道人とは、そのような歩みを続ける人です。
結びに
この七つの指針は、武道人(Budo-Man)として歩む者にとって、日々の判断と行動を導く道標です。
心を磨き、関係を活かし、正しく見、他に尽くし、善を選び、志を抱き、勇気をもって行動する。
その実践の先にこそ、人格と技が一つとなった「武の道」が拓けていくと、私たちは考えます。
武道は、道場の中だけにあるものではありません。
武道を、人生に活かす。
そのための具体的な実践指針が、この「武道人(Budo-Man)の七つの行動指針」です。
編者:増田 章
【IBMA極真会館の理念・目的】
【IBMA極真会館の理念・綱領・武道哲学の解説】










