[第36号:2019-11-17]

お詫び

デジタル空手武道通信第35号として発刊しましたが、第36号の間違いでした。訂正いたしました。

巻頭コラム/ 基本と応用〜稽古とは?

【基本があって応用がある?】

 基本があって応用がある?私は、むしろ応用を意識するからこそ基本が重要だとわかると考えています。 ゆえに、ある程度の基本練習を行った後には、応用を意識させ、その上で基本の役割を理解させることが良いと考えています。なぜなら、基本とは、優れた応用に内在する要素(原理)だからです。

 言い換えれば、優れた応用から抽出した、応用の原理が基本である、と言う事です。おそらく基本と応用を別物と考えている人には、優れた応用、そして物事を発展させることも不可能でしよう。

 物事をより良く発展させられないのは、より良い応用のための原理が理解できていないからです。優れた応用を実現する人には、原理としての基本を徹底的に体得している人です。私が拓心武道メソッドで編み上げた組手型の修練体系は、優れた応用を実現するための原理体得のための手段であり、道具なのです。

 さて、物事を教え伝えるには、基本を徹底的に教え伝えることが重要だ、と私は思っています。しかし、基本を徹底的に教え伝えるという意味が誰にも理解できていません。また、誰にもできていません。繰り返しますが、基本を徹底的に教え伝えるということは、優れた応用に内在する原理を教え伝えることであり、指導者は、それを意識しなければならないのです。

【その時々の状態を吟味する】

 では、優れた応用に内在する原理を教え伝えるとはどういうことか。それは、優れた応用を構造的に理解させることです。言い換えれば、その人の応用の仕方を徹底的に分析することなのです。ただし、応用の仕方は、徐々に発展していきますから、一時の状態だけを見て、是非を判断してはいけません。ただ、「その時々の状態を吟味する」だけで良いと思います。

 「その時々の状態を吟味する」とは、その応用形態(状態)が、どのような基本(原理)と意識(目的)を基盤としているのか。それを分析することです。言い換えれば、応用から基本を考えること(稽る)ことなのです。そのことが、私の考える「稽古」の本当の意味です。

 整理しますと、①基本練習→②応用練習→③自己の心身に内在する基本を考える(基本練習)→④自己の応用を考える(応用練習)と稽古を続けた後、①基本練習に戻り、後は②→③→④→①と繰り返す。そのような練習、すなわち修練を行うことが上達のためには大事なのです。私の考える空手武道修練とは、以上のような考え方を基盤に行います。

【稽古とはどのようなもの】

   以上のような考え方を基盤にすると、稽古とはどのようなものになるか。例えば、伝統技の基本稽古は「暴力的な行為を自己に加えてくる相手を想定した状況に対する空手技の使い方(応用/護身術)」を想定しています。そのような伝統技の応用修練は、ルールによって勝ち負けを設定した競技(スポーツ)的な組手とは別の型(組手型)や限定組手稽古によって行います。

 一方、勝敗をルールによって設定した競技的な組手稽古は、「伝統的な空手武道の技を発展させ、それを活用する技能(間合い、運足、リズム、呼吸、感情、力などの調節能力)を体得するための修練」です。技能の習得は、人間の生きる活力となり、かつ、新しいものを創造する活力となります。ただし、そのような競技的な組手稽古と伝統技の応用修練は繋がりを持たせる、それが増田式武道修練です。そのためには、競技的な組手稽古のルール設定を改善しなければならないというのが、私の立場です。もちろん、競技的な組手稽古も、空手武道の上達への手段です。おそらく絶対的に正しい稽古法というものはないと思います。それでも、技能の習得は重要です。ゆえに改善を試みながら実施するのが良いでしょう。ただし、単なる勝ち負けを喜ぶことを目的とした練習は、本来の稽古とは逸脱しています。時にそのような体験も有益かもしれませんが、基本的には、本来的な自己をより良く進化させる、「上達」とは異なることです。

【武道の稽古の真髄〜すべからく自己の心技体の現状を考えるべし】

 私が考える武道の稽古の真髄は、「すべからく自己の心技体の現状を考え、改善すべし」と言っても良いでしょう。補足を加えると、心は絶えず変化し、身体は必ず衰えます。だからこそ、その状況を正しく認識し、その状況の改善、活用を考えていく。言い換えれば、「他己と対峙しつつ、自己の心身を動かす、同時に不動のものとしていく」です。

 訳のわからない言い方になりましたが、それが増田章の武道哲学です。平たく言えば、最期まで、心と身体を考えていく。そして、それらに感謝していく。それが、私の考える武道修行です。 つまるところ、相手との相対的な評価は手段にしか過ぎず、目指すべきは自己の心身の最善活用なのです。おそらく私の人生も残すところわずかだと思います。

【最期までにやりたいこと】

 まだ心に秘めて置くのが良いかとも思いましたが、最期までにやりたいことの一つを書き記しておきます。それは「従心への武道」と「九法」の執筆です。まだ、準備が不十分ですが、自分の人生に納得し、感謝するためにも、老いが究極の学びの法則であること。そして、それに感謝できるような武道哲学を完成させたいと思っています。

 

 

本号の主な内容

◎映像テキストのページは会員専用サイト、デジタル空手武道教本TXにて閲覧できます。閲覧にはログイン用のアカウントとパスワードの入力が必要です。現在、試験運転中です。閲覧希望の方はメールにて問い合わせてください。

  • デジタル空手武道教本の閲覧は、以下のURLを登録しておいてください。
  • https://masudakarate.com/tx/
  1. TS方式組手セミナー練習試合の全試合映像(2019−11−3)
  2. 組手デモンストレーション増田
  3. IBMA極真会館の必修組手型2019一覧(デジタル空手武道教本TX)
TS方式組手セミナー練習試合の対戦成績(希望者のみ実施しました)

 

 

 

 

 

 

 

ヒッティング・アドバンススタイル組手デモンストレーション〜増田

TS方式組手セミナーにおいて(2019-11-3)

 

IBMA極真会館の会員の皆様へお知らせ

 

  • 11月3日のTS方式組手セミナーに参加し、試合を行った人には試合映像のDVDをプレゼントします。もうしばらくお待ちください。出来上がりましたら連絡します。
  • IBMA極真会館は本部直轄の道場をはじめとして、支部に関してもTS方式の組手法を基本とします(2020年以降)。
  • TS方式空手武道競技規程(ヒッティング競技規程に一部改訂があります)確認してください。
  • TS方式組手セミナーが開催されます。有段者の方は必須のセミナーです。講習会で集中指導を受けなければ、理解に時間がかかります。指導的立場にある有段者は必ず、セミナーを受審してください。
  • ヒッティングの指導は、まずはIBMA極真会館の会員限定で行いますが、2020年以降は外部にも普及活動をする予定です。
  • TS方式組手法について知りたい人へ〜TS方式組手の簡単説明(会員限定サイト:デジタル空手武道教本TX) 

  • ヒッティングはヒッティング・アドバンススタイルに名称変更しました(ヒッティングにはベーシックスタイル、アドバンススタイル、フリースタイルの3種を設定しています)。
  • ヒッティング競技規程(TS空手武道競技規程:会員限定サイト:デジタル空手武道教本TX)
  • TS組手セミナーの内容はヒッティングメソッドの概要の中から抜粋して行います。
  • 拓心武道メソッドの概要(増田章が考えている空手武道の修練法)

 

ヒッティングの理念

 TS方式の組手競技は、単なる空手修練法法ではありません。武道哲学とスポーツ哲学を融合した、武道スポーツの創設のためのルールであり、価値観です

 私は武道でもありスポーツでもある、新たな競技を創設します。それがヒッティング(TS方式の組手競技)です。私は極真空手をより高めるために、新しい組手法を考えてきました。大変長い道のりでしたが、ようやく出来上がった感がしています。ただし、ヒッティングの将来像は、組み技も含めたヒッティング・フリースタイルも含んでいます。しかしながら、まずは突き蹴りの基本技術と技能を高めます。その先にフリースタイルがあります。

 また、ヒッティングは空手競技のためのみにあるのではありません。空手武道本来の武術訓練の目的も包摂融合しています。ですが、私は新しい競技の創設によって空手武道競技をより公共性のあるものに作り変えたいと思っています。その詳細は、以下の競技理念をお読みいただき、感じ取ってきただければと思います。

 今後、私は拓心武道メソッドの普及によって、増田が考える武道の詳細を明らかにしていきたいと考えています。その内容を修練するには、長い年月と努力を要するでしょう。しかしながら、武道修練とは、一生涯をかけて続ける長い修行の道なのです。IBMA極真会館空手道は、初年から青年、壮年、老年まで、生涯を通じ、修練者の心身を鍛え、その能力を高め続けます。

 最後に口幅ったいことを申し上げます。拓心武道メソッドの究極目標は「心眼を開くこと」です。言い換えれば、己の実在を掴み、自他への感謝と己の命を活かす道を実践することです。そして、各々の命の輝きで世の中を明るく照らしていく。そのために空手武道を役立たせることなのです。

 

▼IBMA極真会館空手武道競技規程、第1条より

本規程によって実施される競技の目的は単なる競技スポーツではなく、技術の研鑽と技能の体得による武道人という価値観の醸成である。ゆえに繰り返すが、競技は手段であり、その意義は競技を行うことで、各々の心身訓練の精華としての技術のみならず、自己表現としての技能を高めることにある。ヒッティング競技においては、突きや蹴りなどを当てあうことによるダメージを防具により軽減し、その有効、無効をポイントで表し、そのポイント数で勝敗を決するポイント制・武道スポーツ競技である。なお、ポイントの判定基準の第1義は、技の正確性である。また、身体的ダメージによるノックアウトは判定基準に設定していない。そのことにより、安全性を確保し、老若男女の全ての人々が、突きや蹴りの当て合いなどの武技の試し合いを繰り返し行えるよう考えてある。その意義は、老若男女が、長期にわたり、競技を行うことで、各々の鍛錬の精華としての技術のみならず、自己表現としての技能を高めることにある。さらに、古伝武道の「一撃必殺」と言う価値観を「心撃相活」と言う自他共生の価値観へと昇華させることにある。ゆえに、その競技の目的は、勝者を決するためにあるのではなく、競技者が共に武の理法を学び合い、無益なダメージの与えあいを避ける道を追求することにある。その道とは、自他一体の理法を知ること、他者を生かし自己を生かす道を知ることである。

なお、本競技規程を活用するヒッティング競技者は、「仁(Perfect Virtue)」「智(Sense)」「勇(Courage)」の醸成を目指す、武道人精神(BudoMan Ship)を念頭に活動すること。そして、人間完成を図るための「悟り(Enlightenment)」をゴールとする。さらに、その理念と競技の普及を通じ、人と人との心を繋ぎ、良心を結び、人類の平和共存への寄与を目指すことを最終目的とする。

 

  お知らせ

  • デジタル空手武道通信では、常時コンテンツを修正、補充(アップロード)していきます。
  • すべてのページの閲覧には定期購読会員登録が必要です。デジタル空手武道通信の案内
  • 近日中に以下の更新、掲載を予定しています。 IBMA極真会館空手道の基本修練項目を改訂版の掲載を予定しています。 IBMA空手競技規定の改訂版。 増田章の空手レッスン。
  • 2019年10月以降、IBMA極真会館の会員の方は全員、デジタル空手武道教本を使いIBMA極真会館空手道の独習ができるようになります。10月以降は毎月会費に約210円をプラスするだけで、映像による空手教本の閲覧や会員同士のフォーラムページの活用、会員特別価格での修練用具の購入などができるようになります。
  • デジタル空手武道教本では、今後も内容を更新したり、貴重なIBMA極真会館の活動の映像などをアーカイブして行きたいと考えています。また映像やテキストを使って、道場生に空手武道の独習をしていただくことによって、会員道場生の上達を促進したいと考えています。ですが、その製作、更新には費用とともに、大変な労力と時間を要しています。今後、会員道場生の皆さんの上達のため「デジタル空手武道教本」を維持し、さらに充実させるために年間2500円(月約210円)の教材費をいただくことにご了承のほどお願い申し上げます。

第36号 編集後記

 極真空手がフルコンタクトカラテだと誰が言い出したのだろう。 極真空手を創始した大山倍達師範は、フルコンタクトカラテという分類ラベルを使わなかった。 極真空手は極真空手である。そして極真空手を広めたかったのだと思う。

  もし、当てる空手をフルコンタクトとい言うならば、当てない空手をなんというのであろうか。私は、当てる、当てないをことさら強調してラベリングするのはよくないと考えている。断っておくが、私は当てる空手の方が良いと考えている。だが、古くは防具空手も当てる空手であり、グローブ空手も当てる空手である。最近は、全空連の試合も突き蹴りを軽く当てるらしい。本来、フルコンタクト空手とは、顔面突きも含めて思い切り当て合う空手のことをいう。アメリカで使われ始めた。それを知っている私には、声高にフルコンタクト空手を標榜することに違和感を感じずに入られない。何か大事なものを忘れている感がするのだ。私にとって大事なものは、武道哲学であり、伝統をどのように継承しているかである。ゆえに、ラベリングにはもっと気を使うべきだと考えている。

 さて、私が組手稽古に防具を使えば、私の空手流派は防具空手となるのだろうか。私の空手は極真空手をより掘り下げているだけである。そして発展させようとしているのだ。私は極真空手の基本を使えるものとする。そして単なる競技の勝敗だけではなく、心眼を開く武道として確立したい。そこに必要な分類ラベルは武道というラベルだけである。あえて言えば、増田流極真空手かもしれない。しかし、そんな分類ラベルを貼り付ければ、全ての空手が〇〇流となるかもしれない。今は、そんな面倒臭いことしたくない。ゆえに、私は極真空手を武道として確立することを目標にする。

 そのために、私は極真空手の原点に戻る活動、空手武道を目指す活動をしていきたい。それには防具を採用し、顔面突きも取り入れた組手を実施するということである。もちろん、極真空手の伝統的スタイル捨てるわけではない。その極真空手の組手スタイルをさらに高次のレベルの試し合いにするために、一旦そうするのだ。私が考案したTS方式の組手法は、防具をつけて、ある程度、思い切り打撃を当て合う組手を行う。ただし、手数のみを競うのではなく、究極の一撃を追い求めつつ、競技、試し合いの中で心撃を極める、すなわち心眼を開くことを目標とする。

 先日、組手セミナーを行った。初心者のベトナム人、還暦をすぎた年齢の道場生の組手が素晴らしかった。防具を使った、顔面突きありの組手は空手の原点に引き戻してくれるはずである。その上で、極真空手の原点である、パワー空手を忘れず、いつの日か防具を外して、レベルの高い組手が実現できるようにしたい。

 

 

バックナンバー

デジタル空手武道通信はIBMA極真会館本部サイトから、デジタル空手武道教本Infoサイトに移設してアーカイブします。完全に移設が終わるまでしばらく時間がかかります。