[第48号:2021-5-16]

 

巻頭言

         

 

 

 

 

  数週間前、拓心武道メソッド、特にヒッティング方式の組手に要諦についての小論を書いた。長いので2部に分けた。本号には、その小論を掲載しておく。増田道場独自のヒッティング方式の組手法について、より深い理解をしたい人には、是非一読していただきたい(長いので少しづつでも良い)。その前に、大まかにヒッティング方式について述べておきたい。

【ヒッティング方式の組手法】

ヒッティング方式の組手法には、顔面突きあり、下段廻し蹴りあり、防具使用、ポイント制(技あり、勝負あり制)などの特徴がある。おそらく、試合を数回経験すれば、大枠は理解できるだろう。だが、本来は理解して、組手稽古をを行い、その延長線上に試合を位置づけてほしい。 だが、現時点でヒッティング方式の組手法のイメージが全ての人に理解されているとは、言い難いと思っている。

 突きの技術がある程度のレベルに達していて、運足(足使い)の基本ができていれば、ヒッティング方式は簡単である。だが、門下生の中には突きのレベルが低い人や運足が身についていない人がいる。それは私に責任があるだろう。空手に限らず、まずは立ち方と足使いを教えることが重要だと言い続けなければならなかった。だが。それらの問題は、極真空手の伝統的な稽古法に不十分な点があるということでもある。また、現在の極真空手の組手スタイルに問題があるからである。私は、それらの問題を解決するためにヒッティング方式を考えた。まずは経験をすることだと思う。かと言って、でたらめに組手を行えば、悪い癖がついたり、相手や自分が怪我をするということになるだろう。悪い癖は、一旦身についたら、取り除くのに労力を要する。現在、極真空手家のほとんどに、打撃技を使う者には良くない癖がついている。かくいう私にも癖がついているが、それを取り除くのには1〜2年ほどあれば取り除けると考えている(ただし、コロナ問題が終息した上での話だが)。

 いま私は、辛抱強く、組手理論の変革を唱え続けなければならないと思っている。ここで補足を加えれば、現在、「顔面突き」「下段回し蹴り」、両方ありの試合を行う格闘技はムエタイ、キックボクシング、MMA、中国武術の一部だ。そして、極真空手の道場では増田道場だけだろう。

 だが、その点のみを見て、私が極真空手とは異なることを行っている、と捉えて欲しくない。現在、極真空手の創設によって、新しい組手法が実践され、50年以上の歳月が経過した。素直な気持ちで、その過程において取り入れられた多彩なな技術を生かした上で、本来の空手の基本である、顔面突きありの組手および試合を可能としているのが、ヒッティング方式なのだ。ただ、そのことを実践するには、相当な研究と覚悟が必要であったことは想像して欲しい。

 さらに言えば、本来の極真空手は顔面突きありの空手であった。さらに繰り返せば、極真空手の特徴は、ムエタイや中国武術など、あらゆる格闘技の利点を柔軟に取り入れてきたところにある。また、ヒィング方式の組手法を行えば、敵が殴りかかってきたり、掴みかかってきた時の対処法(護身術)を含んだ武道として極真空手を再興する。本来の極真空手はそのような空手であった。

 現在、私の道場では、極真空手の試合方法をひとまず置き、新しいスタイル(方式)を加えている。もちろん、新しいスタイルを導入するまでには、何段階か準備、試行期間があった。その試行期間、頑張ってついてきてくれた我が門下生には感謝している。

 さて、もう一つ重要なことを述べておく。ヒッティイング方式(TS方式)の組手法は従来の極真方式とヒッティング方式(TS方式)は両立する。なぜなら、非常に互換性が高く、かつ相補的に機能することが私には鮮明にイメージできるからだ。ただし、従来の極真空手の試合法の戦い方(戦術、組手スタイル)は千差ある。そのスタイルを絶対と考えている人達に理解されるには時間がかかるだろう。私は、私自身の極真方式における戦い方は絶対ではないと考えている。また、私はもっと高レベルの技能を組手稽古で身につけたいと考えてきた。しかし、従来の組手法では、その価値観やゴール設定が、その地点にたどり着かせてくれないことをわかっている。考えればわかることだが、ルールが違えば、私は異なるスタイルで戦ったに違いないと確信する。つまり、極言すれば、打撃技を主とする格闘技者として、もっと応用力の高い戦い方を体得していたに違いないのだ。ただし、極真空手の草創期、力とスタミナを競うような組手を世界中の強者と行い、その価値観を共有したことは、私にとって、非常に貴重な体験だったと思う。

  だが、かつての時代とは異なり、少年少女、壮年など、様々な年代の人達が極真空手を愛好し、かつ実践している。また、総合格闘技という、実践不可能と思われた格闘競技が社会で認知、浸透している。そのような状況の中、かってのスタイルのみにこだわるということにどのような意味があると言えるのだろうか。

 私は、他の格闘技も含め、伝統を大事にしながらも、その大事にする伝統の本質は何かと考え、その本質を大事にすれば、変化しても構わない、と考えている。もう少し丁寧にいえば、変えるのではなく、其処に置くだけである。そうすることで、自然に全てが融合し、かつ深いところの本質というものが再認知される。そして、その認知は、新しい命を生み出すのである。また、抽象的なことを書いた。とにかく、ヒッティング方式の組手を行って見てほしい。そして、その前に以下の小論に目を通し、心の隅にでもおいてほしい。

  1. わずか3手先を読むだけ〜その1(PDF)の全文
  2. わずか3手先を読むだけ〜その2(PDF)の全文
  3. 増田 章の アメバブログにも掲載されています。

 

 

 

【武道修練のためのOS】  

 冷静にみれば、何十年も顔面突きなしの極真カラテと並行し、他の空手や格闘技を研究してきた私と門下生の情報量や技能は異なる。PCに例えれば、データベースや処理能力などが大きく異なるに違いない。だが、その代わりに、手探りの修練を行ってきた私と異なり、わが門下生の修練方法は、ガイドされている。具体的には、組手を行うための攻撃技術のみならず防御技術が整理され、かつその使い方が組手型によって示されているということだ。さらに私は、防具組手の修練をより効果的、かつ効率的に行うために、独自の防御技術も考案した。補足すれば、組手型とは戦いの局面の原則を習得するための手段である。実は、若い頃の私が欲しかった、武道修練のためのOSと言っても良いものを創出しているだけだと言っても良いかもしれない。そして、私がOSと例えるものが拓心武道メソッド(増田式空手武道メソッド)だ。現在、それを極真会館増田道場の修練体系に組み込もうとしている。ただし、完成には数年の時間が必要だろう。現在、更新と改良を加え続けている。  将来、そのOSによって、手探りの格闘技修練の困難さが改善され、誰もが短時間、かつ、容易に複雑な武道修練を行えるようになる、と私は楽しみにしている。また、そのOSには、さらに多様な武術修練ソフトとの連携も可能となるだろう。

(その1より抜粋)

続きは→わずか3手先を読むだけ〜その1(PDF)の全文

【わずか3手先を読むだけ】  

 さらに言えば、私はテニスの試合は将棋にも置き換えられる、と私は考えている。先述したテニス試合の基本構造を思い出して欲しい。すなわち、①段階(局面)は1手目、②段階(局面)目は2手目、③段階(局面)目は3手目、④段階(局面)目は4手目、⑤段階(局面)目は5手目と言える。

 実は、長年にわたり、テニスの試合や将棋のような観点を、空手試合(競技)にも生み出したい、と私は考えてきた。そして長い年月の試行錯誤を重ね、ようやく新しい組手法を考案した。それがヒッティング方式組手法(TS方式組手法)である。  ヒッティング方式を採用し、まずもってわが門下生には、組手には、自分または相手が繰り出す1手目に対し、2手目を繰り出す。そしてその2手目に対し3手目を繰り出すという基本構造があるということを了解してほしい。そのことが了解できれば、相手の1手目を予測し2手目の反応がより速く、かつ、より善くできるように準備することができる。同様に自分が先手として1手目を繰り出した時、相手の反応、すなわち2手目はどうなるかを予測できる。そして、相手の2手目に対する自分の3手目を予測、準備しておけば、自分の心技体は崩れずに、より有効な(より速く、かつ、より善い)一撃を繰り出せるのだ。  

    補足をすれば、基本的には相手に1手目を出させるよりは、自分が先手で1手目を繰り出し、相手の2手目を観る方が有利だと直感している。ただし、その1手目は、拓心武道で「囮技」と名付けたところの「相手の出方を探るような技」を用いることが前提である。つまり、囮技を使い、その技に対する相手の反応の予測、かつ確かめる。すなわち2手目以降の予測や準備を行っていくのだ。そして、それらの予測と準備に必要なことは、まず攻撃の種類を把握することと同時に防御法、すなわち拓心武道でいうところの「防御×反撃」の種類を把握することである。そこで忘れてはならないことは、防御と攻撃(反撃)は一体でなければ組手とはならないという原則である。テニスがそうであるように。

(その2から抜粋)続きは→わずか3手先を読むだけ〜その2(PDF)の全文

本号の内容について

昇段認定証授与式について

4月13日、極真会館増田道場から8名の黒帯に対する昇段認定証書授与式が行われました。昇段者の皆様、おめでとうございます。昇段認定証の授与式の模様を閲覧できます。昇段者並びに昇段者の保護者のみならず、すべての道場生が新たな極真会館増田道場の黒帯の姿をご覧ください。合わせて、昇段者の「空手道と自己の成長」というテーマの小論文を参照いただくことをお勧めします。

昇段者の皆さん、おめでとうございます!!

◎課題ありの人は、もう少しです。

▼以下は昇段者の小論文からの抜粋です

 

 私の父は、カナダ人なので、将来海外に行く機会があると思います。その時には、これまでの空手の経験を生かし、たくさんの人に空手道の良さを伝えてあげたいです。  

 「空手道とは何か。」この質問に答えはありません。ですが、自分なりの答えを見つけることで、自分は成長すると思います。このことを忘れずに、これからの毎日を過ごしていきたいです。

(多摩道場:舛田 麟)

全文を閲覧したい人は→昇段者小論文(デジタル空手武道教本サイト)から


  そして今、私は 14 年の歳月を経て昇段審査に臨んだ。私はきっとこの日のために空手を続けてきたのだと思った。理由は、親、兄、仲間、先生る、相手に感謝を込めて空手が出来たからだ。緊張しながら、ワクワクしながら、今まで支えてくれた人へ恩返しをしていくかのような 1 日に思えた。  

 この気持ちに気づくことができたのは、様々な体験をしてきたからだ。きっと 1 年前でも、半年前でも気づくことはできなかったと思う。それほどに私にとって今、昇段審査を受けること、黒帯を締めることは大きな意味があるのだ。それを思うと、約 8 年間 2 級の茶帯を締めていてよかったとも思う。

(八王子道場:小室俊吾)

全文を閲覧したい人は→昇段者小論文(デジタル空手武道教本サイト)から


  もう一つ重要なのは心のコントロールである。私は緊張しやすく、動きが硬くなって技を出せなかったり、視野が狭まりうまく防御できないことがある。余計な力を抜き、スムーズな受け返しの繰り返すことの大切さは先輩方からたびたび言われてきた。その改善に取り組んだ中で気づいたことは、心のコントロールの重要性である。ただ相手に勝つことや、技を決めることだけを考えていては体のコントロールがうまくできない。心をコントロールすることで正しい姿勢を保ち広い視野を確保できて受け返しがうまくできる。相手がいる組手で重要なのは相手とのコミュニケーションであり、相手のレベルやタイミングに合わせることによって技の応酬が生まれ互いに良いパフォーマンスが生みだされるということが少しずつ分かってきた。まだこのような心のコントロールが十分できているというには程遠い状況ではあるが、これからも試合などの緊張感の高い状況の中で追究していきたいと思う

(日野道場:上村達之)

全文を閲覧したい人は→昇段者小論文(デジタル空手武道教本サイト)から


  私は幼い頃は組手をするのが好きで、歳をとるにつれ体力が無くなってきてずっと相手を見ながら動いていないといけない組手に苦手意識を持ち、型をしている方が楽しくて好きになりました。しかし昇段講習会や昇段試験に臨むにつれて、どうしたらもっと組手が上手くなるか、相手の動きの癖を見つけようとしたり、どうフェイントすれば良いかや、自分で何かポイントをみつけるように試みるようになった時、組手をするのって楽しいなと感じることが出来るようになりました。そしてその自分で見つけたポイントを活かせるようになる事がとても楽しく、嬉しく感じるようになりました。

(八王子道場:持田青空)

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 中学に進学し、以前とは違う忙しくなった毎日の中でもなんとか稽古に足を運んだ。その頃には、自分の入門のきっかけとなり、切磋琢磨した友人達は残念ながら道場を去り、自分一人になっていた。正直何度も空手をやめることを考えたが、ここまで継続出来たのは、やはり黒帯取得という大きな目標があったからだ。

(多摩本部:和田一真)

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 これから空手を継続していく上で「心を制する」気持ちをもって、弱い自分を制して力を最大限に発揮し、真剣な中でも相手を思いやる心を作ることが出来るよう取り組んでいきたいと思います。

(高田馬場道場:高落信之)

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本号の内容

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第48号 編集後記 

 

 先日、8名の昇段者に昇段認定証書を授与した。 その授与式において、私には感じるところがあった。まずは、物事に継続して取り組み、節目を持つことは人生経験として重要だということ。また、そのような経験に取り組む姿は「美しい」ということであった。    

 「美しい」などというと、「また大仰な話が始まった」と思われるかもしれない。言い換えれば、私には若い彼ら(壮年はいなかった)の「ひたむきさ」に感動していた。もちろん、彼らの技量は初段程度のもので、まだまだである。彼らの技量不足に関しては、私の指導者の責任として深く反省した。また、空手によって彼らの能力をさらに引き出せるようにしたいと思った。

  そして、私の感動は、最後の総評に現れている。だが、もっと端的に伝えればよかったと反省している。もう少し具体的に話さないと理解されないだろうと、自分の未熟が恥ずかしい。今後、再考し、かつ、補足を加えていきたい。    

 最後に、本道場では、「空手と自己の成長」という小論文の提出が昇段審査の課題となっている。今回、その小論文に、彼らの心の成長の跡が伺えた。心の成長とは、増田流にいえば、「認識の変化」と言っても良いかもしれない。  

 私は様々な修練の根底に「認識」というものがあると考えている。そして、その「認識」の変化、更新に合わせ、身体全体の認知、そして操作機能が変化するというのが上達の姿だと考えている。また、「認識の変化」と「認知能力の変化」を自覚しつつ、自らが有する「花(世阿弥の言う所の)の種子を見つけ、それを育てていくことが、上達であると考えている。また、世阿弥が「花鏡」に記した「初心不可忘(しょしんわするべからず )」という言葉の意味も其処にあるのではないかと思っている。