[第54号:2021-11-14]

 
道場生のみなさんへ
 
コロナ感染拡大が収束に向かう様子ですが
まだまだ安心はできないと思います。
また、これから冬の季節になります。
今後もコロナ感染のみならず体調管理に気をつけましょう。
なお、空手修練は体調管理の一環です。
 
 

 

【本号の内容】

 ◎デジタル空手武道教本サイトの閲覧にはPWの入力が必要です(一部PWが不要のページもあります)。 IBMA極真会館増田道場の会員には、閲覧用のPWを伝えてあります。もし、忘れた場合は事務局までメールにてお問い合わせください。 ◎デジタル空手武道通信の映像はインターネツトへの接続環境のあるところで閲覧することをお勧めします。  

  • 巻頭コラム:構えについて〜拓心武術の戦法論(拓心武術)
  • 第11回月例試合の報告
  • 昇段審査保留者、合格のお知らせ
  • 今月の映像教本
  • 特別映像教本
  • 昇段保留者・合格の報告
  • 編集後記 第54号
  • 11月中旬にデジタル空手武道教本のPWが変更になります。新しいPWはメールにてお知らせします。お気をつけください。
  • デジタル空手武道通信・55号の発刊は12月の初旬の予定です。

イベント案内

  • 11月28日にチーム対抗・紅白試合が行われます。現在、参加者を募集しています。皆さん、試合経験、思い出作り、などなどのために奮ってご参加ください。→案内及び申込はこちら

 

巻頭コラム:構えについて~拓心武術の戦法論(戦術理論)

         

 

 

 

少年部の生徒が

 昇級審査における試合の前、小泉君という少年部の生徒が私に質問してきた。「僕の組手の構えは基本構えとは違いますが良いですか」と。私は「基本構えはあるが、組手の際は自由だ」「自分で考えて構えれば良い」と答えた。

 拓心武術の組手修練における基本構えの上段とは、肘を45~90度ほど曲げ、肩の力を抜き、拳をこめかみの高さまで上げて構えるものである。小泉君の構えは、基本構えの上段を変形したものである。因みに彼の構えは基本構えの上段の腕構えを変形したものである。試合の際、彼は前腕を少し前に出し、後腕を顎の前に置いて構えた。おそらく、彼は他の生徒より背が高いので前拳(前腕)を前に出し、相手を牽制、かつ順突きを当てやすくすること。また、背の高い彼にカギ突きや上段回し蹴りで攻めてくるものは少ないから、横面(頭部横)より、顎の前をガードして、相手が間合いを詰めてくる際、いち早く直突きで対応するという戦い方が自分を優位にすると考えたのだろう。それは理にかなっている。そのように自分で工夫することを私は良いことだと思っている。だが、その構えは基本構えの応用だということを理解してほしい。

「基本構え」とはどういうものか 

 ここで拓心武術の組手修練法における「基本構え」とはどういうものか、述べておく。まず、「構え」とは心のあり方(心構え)を示すものである。拓心武術ではそのように説く。ただし、構えとは目的に対し合目的性を有していなければならない。ゆえに組手の際の構えは、勝つために有効なものではければならない。なぜなら、拓心武術の組手修練の目的は勝つこととしているからだ。だが、その真の目的は、目的に対し真剣に向き合うことにある。

 因みに拓心武術の組手修練法とは、徒手で頭部、腹部、下腿を突いたり蹴ったりして攻撃し合い、突き技、蹴り技の技術とその防御技術の有効性を競いあうものだ。その様な組手試合では、頭部を相手の突きや蹴りから守り易い、かつ相手の頭部を突きや蹴りで攻撃し易い「身構え(自然体組手立ち)」の有効性が高い。

 拓心武術における組手・仕合(組手修練)は、攻撃と防御を巧みに活用し、勝つために、より応用変化し易い構えを「基本構え」とする。だが、拓心武術の組手修錬法には徒手対徒手のみならず、徒手対小武器といった組手修練法がある。また投げ技を使っても良いとする組手修練法もある。そのように戦いの状況(想定)が変化した場合、拓心武術の基本構えは上段の腕構えから中段の腕構え、また下段の腕構えと自在に変化する。例えば、上段の腕構えは、直突きのみならずカギ突きや上段回し蹴りなどにも対応しなければならない場合に有効である。だが、相手が直突きを得意としていれば、腕構えを変形させて、前拳を前に出したり、後拳または掌底を顎の前に置き変化させる。一方、相手が小武器を使う状況においては、小手や足をを打たれる(切られる)可能性が高くなるので、腕構えを中段や下段に取ることも有効だ。要するに、戦いの状況変化に対し、臨機応変に応用変化できる構えを総じて「基本構え」とする。

 全てをゴールの実現に結びつけること

 少々脱線するが、闘争、戦い、組手に限らず、ゴールが明確でないことには対しては、技術も体力も戦法(戦術)も作り様がない。また、活かし様もない。逆に言えば、組手においては、技術の駆使と技能の発揮の全てをゴールの実現に結びつけることが肝要である。その様な関係性を自覚することで初めて勝つということが理解できる。

 さらに言えば、人間はゴールが明確なときに心身が活性化する。つまり、ゴールを実現するために、技術や体力、技能の養成に尽力できるからだ。また、拓心武術の組手修練においては、優れたスポーツ(ゲーム)の様な戦術論や技能論が生まれるに違いない。なぜなら、ゴールを明確にしているからである。だが、空手には、大袈裟に生死を賭すと掲げながら、目的やゴールが不明瞭な組手法、競技法が多い。

拓心武道

 話を戻して、ここで断っておきたい。修練・修行法としての組手の目的、ゴールは勝つことだが、拓心武術の究極の目的は組手で勝つことではない。拓心武術のより高次の目的、また究極の到達目標に定めていることは別にある。それは、組手修練を含めた武術修練を自己の身体の可能性を拓き、心の機能を高める手段とすることである。言い換えれば、自己を活かす武術を体得するための修行により、自己を活かす道を知り、それと一体となることである。さらに言えば、その様なあり方を目指すことで武術修練が武道(拓心武道)となる。

 おそらく、組手を行えば、大方の人は相手に負けたくない、と思うに違いない。だが、相手に負けたくないと思って組手を行うだけでは、勝つ道を知ることはできない。また、武道の修練にはならない。では、組手修練における勝負を自己の成長につなげ、勝つ道を知ることにつなげるためにどうするか。それには、先ず以って戦いの真の目的を自らの心身で問い詰めること。そのことと同時に相手とのとの向き合い方を考究しなければならない。要するに自分の心の態勢を知り、かつ整える必要がある。

 本当の武術修練には、単なる取っ組み合いのような組手修練で満足するのではなく、さまざまな鍛錬や稽古、そして体験を包括するような観点が必要だ、と私は考えている。また、その様な観点があればこそ、組手修練が活かされ、武術修練が活かされ、人間生活が活かされると思う。また、全ての行動や行為が活かされる様に考究、かつ実践していくことで、武術が武道となるのだ、と私は考えている。

 

構えに対する問い

 最後に、少年部の生徒の「構えに対する問い」は、相手との向き合い方を意識していたからこそ発せられたものだと思っている。だが、基本をもう少し深く掘り下げて欲しいとも思っている。原則としては、基本の応用は、基本をある程度こなしてから行うことが望ましい。だが、彼の応用は基本構えの意味を理解した上の応用だから良いだろう。むしろ、よくないのは基本構えを上段の腕構え(ボクシングでいうハイガード)としているのに、顔面なしの組手の癖が抜け切らないのか、腕構えが低いものは基本の心構えも理解していないのだろうと思っている。

 繰り返すが、拓心武術の組手修錬法には打撃技に限定したもの以外にも、投げ技を有効とするもの、徒手対小武器(ナイフや小刀をイメージした組手用単棒を用意している)がある。そのような組手の際は、中段の腕構えや下段の腕構えなども用い、それらの構えが「基本構え」となることもある。基本構えに関しては、修練体系を更新する際、改めて説明したい。大事なことは、中段の腕構えも下段の腕構えも上段の腕構えとの繋がりをイメージして理解することだ。また、基本、すなわち細事をゆるがせにせず、追及していくことである。一方、「構え」が出鱈目なものは、相手との向き合い方も、自分の心の態勢も出鱈目だと言っても過言ではないだろう。そして道を知ることもできない。

昇段審査の保留者の合格のお知らせ

  • 昇段審査に保留となっていた朴氏、石毛君が課題合格して、昇段認定合格となりました。おめでとうございます。
  • 朴氏の昇段・小論文(PDF版)

昇級審査11月7日のお知らせ

第11回 月例試合の報告

 

 

 

ヒッティング方式の試合の見方

 

その他の行事報告

  • 伝統型講習会が実施されました。11月3日

 

 

 

今月の映像教本

  • 教本の更新の際は、黒帯及び黒帯指導員は速やかに動画確認をしてください。そして稽古指導に役立ててください。
  • 極真会館増田道場は、より良い空手武道とその修練を伝えるために研究を行い、修練体系を更新をしていきます。特に拓心武術の修練は極真会館増田道場の真髄です。時間が空いた時に、動画だけでも確認しておいてください。
  • 基本組手技(上段直突き/その場移動)の動画を更新しました→教本ページ
  • 基本組手技(上段カギ突き/その場移動)の動画を更新しました→教本ページ
  • 基本伝統技(金的蹴り/平行立ち)の動画を更新しました→教本ページ
  • 基本伝統技(中段膝蹴りと上段膝蹴り/平行立ち)→教本ページ

 

特別映像教本〜徒手対小刀

  • 現在、作成中の修練カリキュラムに徒手対小刀の組手法があります。拓心武術の修練方法は今後、さらに発展していくでしょう。ただし、指導するのは、TS方式の組手試合の経験があり、徒手対徒手の基本をある程度理解している人が対象です。初心者は、まず極真空手の基本と拓心武術の基本を学んでください。

 

月のイベント予定

  • 11月28日(日) 2021年チーム対抗・紅白試合
  • 12月26日(日)    第12回 月例試合

重要なお知らせ

  • デジタル空手武道教本は、不定期にコンテンツを修正、補充(アップロード)していきます。道場稽古の予習、復習に活用してください。
  • IBMA空手武道チャンネルには「自宅でできる空手武道レッスン」を掲載しています。参考にしてください。
  • IBMA極真会館の重要なお知らせは、メールでお知らせしています。会員道場生はメール登録をお願いします。
  • デジタル空手武道教本はIBMA極真会館の会員道場生向けの教本です。閲覧にはPWが必要です。一斉メールでお知らせしていますので、必ずメモしておいてください。もし、忘れた場合は、事務局までお問い合わせください
  • 極真会館増田道場生の皆さんへ〜年会費(半期分)を納入された方には1000円分のTSクーポンが発行されています。TSショップでの修練用具の購入にお使いください(TSクーポンの有効期限は発行日から1年間です︎/新規入会者は除く)→TSショップはこちら
  • セキュリティー管理のため、デジタル空手武道教本の閲覧のためのPWは定期的に変更されます。連絡用メールアドレスを本部事務局までお知らください。登録のない方には道場からの連絡が届きません。

           

第54号 編集後記

 コロナパンデミックが始まり、2年になろうとしている。最近、ようやくコロナ感染者の増加が収まりつつあるようだが安心はできない。そんな中、飛沫感染に効果ありということもあって、防具を使った直接打撃の組手法に取り組んできた。その組手法は、極真空手の伝統的な組手法で培った技術に加え、私が長年にわたり、経験や研究を続けてきた、顔面突きありの組手法である。その組手法を実施して、早くも約1年が経過する。

 その間、さまざまな発見やアイディアが湧き上がっている。アイティアの部分は、この組手法をベースにすれば、小武器(小刀・ナイフ)を使った組手法を安全かつ、空手の技術を活かしながら行えると考えている。また、顔面突きありの組手法による、技能や技術は小刀を持てば、力のない人間でも武器の殺傷力を活用して、その技術、技能を活かすことができると思う。そして、そのような考えが、武術全般の考え方だと、私は思う。

 発見した部分とは、この組手法は身体能力も重要だが、それよりも真面目で物事を慎重、かつ深く考える者の方が上達が早いということだ。もちろん、個人差があるだろうし、私の考案した拓心武術(拓心武道メソッド)に則って修錬したからだと思う。つまり、私のメソッドでなければ、体力の勝る者、気の強い者が依然として強いままだったはずである。また如何に真面目で、物事を慎重に考える者であっても、自分の癖を素直に改善する能力が低い者は上達が遅い。実はそれも発見の一つだ。つまり、いかに心のあり方が物事の上達に影響があるかということである。そして、ある癖を強く有する者は、その癖が形成される期間が長かったからに違いないとも分析している。その対策は簡単である。時間をかけて形成された癖は、時間をかけて直すしかないということである。中には、一瞬で癖を直す者がいるかもしれないが、私はそんなことを期待しない。ただ、自己と真摯に向き合えと教えるだけである。かくいう私も、直したい癖と格闘している。

 「癖を直す」と言ったそばだが、ある程度の癖があるのは構わないとも考えている。要は、そのことを自覚し、かつ活かせるかどうかだ。つまり、自分の癖を自然の理法(道)に合致させることができるかどうかが重要なのだ。そのためには、本号に掲載した戦法論の中にも書いた様に「ゴール」を明確に意識して行動することが必要だと考えている。

 もう一つの発見・気づきとは、私の道場で長年、空手を稽古してきた壮年部の朴氏と小学生の頃から空手を続けている石毛くんが黒帯になったことによるものだ。段位は最終的には私が認定する。だが、生真面目な私は、朴氏を3回、石毛君を2回不合格とした。まず朴氏は伝統型、基本が正確でなかったので不合格とした。そして伝統型は頑張って上達が見られたので合格とした。その代わりに組手の技量をもっと上げてもらうために、組手試合の課題を設定した。その課題は、顔面突きありの新しい組手法であった。1回目の挑戦では、及第点を与えることができなかった。実は石毛くんの場合は、これまで組手にほとんど勝ったことがなかった。また、伝統型にも少し不十分な点があった。それでも伝統型は、彼が頑張り、形が整ってきた。問題は組手の勝利だ、と私は考えた。なぜなら、黒帯取得後に有段者として気持ちが充実しているかどうかが大事だと考えていたからだ。そして、気持ちの充実には組手の技量の向上を体感しなければ、と私は考えていたのだ。

 基本的には、組手の強さよりも稽古に対する真面目さを優先する感覚が私には強い。なぜなら、稽古の仕方が真面目な者は、必ず上達する、と私は考えているからである(諦めなければの話である。それが難しい)。だが、指導の仕方の影響が大きいと思う。そういう意味では、私の指導法がよくなかったのだと考えている。ゆえに現在、指導法を徹底的に見直ししている。その一環が、動画などによる修練教本であり、新しい組手法の採用、などの修練カリキュラムの改訂である。断っておくが、新しい修練法は、伝統的な極真空手のの基本を今まで以上に大事にするものだ(真の意味で)。ゆえに今後は伝統型や組手型の修練も本格的に行う。また、その中で空手本来の武術・護身術的な技の修錬も行うつもりである。その様な修練カリキュラム(修練法)によって空手武道修練のゴールを明確にしていくのである。ゴールが明確でないものは理解されない。またゴールを明確に意識できないものに上達はない。これが、未熟な空手少年が年老い、自らの人生の反省を重ね、思うことである。それゆえ、自らが伝える空手武道のゴールを明確にしなければならないと考えている。早く。

 さらに述べれば、彼らは黒帯までもう少しだという思いが強っかったのか、よく頑張ったと思う。そして、それは黒帯の魅力があればこそだと思う。だが、私はそこに居着きたくない。周りも私も、途中で投げ出すのではないか、と内心思っていたにもかかわらず、彼らはよく頑張ってくれた(私は投げ出さなければ大丈夫だと思っていたが)。そして、運よく試合で結果を出してくれた。運よくといったら彼らは心外だろうが、運よくである。だが運良くという中に大事なことがあったと思う。それは彼らの試合に対する心構えがいつもより真剣だったということである。要するに、心構えが真剣だからこそ、自己の力をいつもより発揮できたのだ。このことを銘記して欲しい。私も、人間の可能性を信じ、それを存分に発揮させるには、どのようなゴール設定とサポートをしたら良いかを考えている。そのことを掴み、具現ができたなら、自分の理想に向かって狂人のように生きてきた私でも人の役に立てるかもしれないと思っている。

 朴氏は私より一つ年上、還暦を超えている。背が高く、センスはある。そして気が優しい人だ。石毛くんも気が優しく、真面目、いつも弟、2人を連れて道場に通ってくる。

 朴氏合格のメールを事務局から受けたあと、車中で目から溢れるものがあったらしい。ようやく欲しいものが手に入った喜び、諦めなかった自分への感謝か。

 兎にも角にも、そのことを聞いて、心が引き締まる思いがした。また石毛くんは、試合に勝った後から、組手稽古が積極的になった。見違える様に。今私は、空手の黒帯をもっと価値のあるものにしなければ、と強く思っている。

 

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