[第56号:2022-1-9]

 
謹賀新年
 
コロナ感染が再拡大しております。
前回の状況とは、少し異なりますが
免疫力の落ちる寒い時期
体を冷やさぬよう
健康管理にお気をつけください。
 
 
本道場も昨年に引き続き
感染拡大に注意してまいります
 
 
 
 

 

本号の内容

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  • 巻頭コラム:どのように相手を撃つか(打つか)〜拓心武術の戦闘理論
  • 第12回月例試合の報告
  • 2021年 月例試合の戦績の発表
  • 特集:鈴木智(高田馬場・壮年部)の組手上達の記録
  • 編集後記 第55号
  • 1月中旬にデジタル空手武道教本のPWが変更になります。新しいPWはメールにてお知らせします。お気をつけください。

イベント案内

  • 第13回 月例試合(1月30日)〜現在、参加者を募集しています。皆さん、試合経験、思い出作り、などなどのために奮ってご参加ください。→案内及び申込はこちら

 

巻頭コラム:どのように相手を撃つか(打つか)〜拓心武術の戦闘理論

       

 

 

 

 

【相手を打つ(撃つ)とは】
 

 TS方式の組手仕合を行う際、心に留めておくと良いことがある。それを心に留めて組手を行えば、相手への攻撃をより善く行えるようになるだろう。

 さて、空手の組手修練において相手を打つ(撃つ)とは、相手を突き技や蹴り技で攻撃することである。いうまでもなく、攻撃技はより効果的に繰り出さなければならない。空手の突きや蹴りは技であるからだ。技は実効があってこそ技である。だが、組手においては、相手を突きや蹴りなどの技(攻撃技)を繰り出せば、相手は防御体制をとったり、防御技を駆使するかもしれない。また反撃もあるかもしれない。そのような状況の中で、自分の技(攻撃技)を実効たらしめることは容易ではない。では、私がこれまで、より良く相手を撃つ(打つ)ために意識、かつイメージしてきた事柄について述べてみたい。

 まず、組手における戦い方の基本は、絶えずヒットポイントを狙って攻撃技を繰り出すということである。ヒットポイントとは攻撃目標のことだと言っても良い。また、ここでいうヒットポイントとは、相手によりダメージを与える箇所である。

【組手において攻撃目標は絶えず変化している】

 そんなことはわかっていると思われるかもしれない。だが、攻撃目標をどのようにイメージしているかが問題である。私は、「組手において攻撃目標は絶えず変化している」と捉えている。その意味は、相手は攻撃技を繰り出し、かつ攻撃に対し防御することもある。要するに、私は攻撃目標を取り巻く状態、自分の状態との関係性を含めれば、攻撃目標は絶えず変化していると考えているのだ。また攻撃目標を取り巻く状態の変化を簡単に述べれば、無防備か防御技×反撃技が準備されているかでは状態が異なるという事である。

 そのような状況では、サンドバックを打つように技は決まらない。また一つの攻撃技のみでは、相手に攻撃を予測され、簡単に防御されるか、攻撃の際に生じる隙を衝かれてしまうだろう。
 私には、組手の最中、相手のヒットポイントが絶えず数値化されているかのように見えている。例えば、こめかみ、あご、脇腹、太もも、など、何箇所かあるヒットポイントの防御体制(態勢)の良し悪しの判断を、「ここは命中する可能性が100%、ここは命中する可能性が30%…」というように見えている(感じている)。より正確に言えば、数値が見えているのではない。もしA Iが判断するならそのように数値化し、その数値を膨大な演算処理によって最適解を導き出すのであろう(AIのことはよく知らない)。だが、私の場合は、その可能性を数値の高低を一応は判断する(判例を参考にして定跡的に)。だが、必ずしも命中の可能性が高い箇所のみ攻撃技を繰り出すわけではない。絶えず変化し続ける状況の流れを読み取り、定跡は一応、頭に入れた上で、命中の可能性の低い箇所を撃つ(打つ)ことがある。次の展開に善いと感じる箇所(手・技)だからだ。うまく表現できないが、命中100%の可能性の箇所や技は、相手の防御技能が巧みな場合、打ち崩す事ができないと感じるからであろう。また、強敵には100%命中確実な攻撃箇所など、ほとんどないと言っても良いと思うからだ。さらに、その可能性は絶えず変化している。ゆえにA Iのように計算している時間はない。瞬時に局面を把握し、変化を捉え、その中からより可能性の高い箇所を感じ取らなければ、戦いの状況では判断が遅すぎることにつながる。もちろん、命中の可能性の高低は、相手側の要因のみならず、自己の要因、すなわち攻撃技術の精度などにも関係するので、そんな単純な話ではない。その部分は今後、研究が進めばまとめてみたい。

 実は、私は狙いたい攻撃目標・ヒットポイントに対し、なるべく命中の可能性が高まるまで、相手の状態への変化を待っている。また、相手を動かし崩して、その可能性を高めるということを考え、試みている。ただし、こちらがのんびり構えていると相手が攻撃を連続して仕掛けてきて、自分の体制(態勢)が崩れる場合があるので、たとえ命中の可能性が低くとも相手を攻撃しておかなければならない。それが牽制の意義である。おそらく、私がそのようなことを考え組手をしていることを誰も知らなかったと思う。また理解されないかもしれないとも思っている。つまり、私は攻撃目標を数値化して見えていると述べたが、それはたとえであって、実際はここが何%であそこは何%というように認知しているのではない。だが、数値は浮かばないが、感覚的に可能性の高低を認知しているのである。しかしながら、その感覚があることが重要だと考えている。 

【組手の意義とは何か?】


 少し脱線を許していただくと、多くの人の組手に私同様の視点があるとは思えない。その理由を一言で言えば、組手法がよくないからだ。その原因は、組手の目的と方向性の設定が不明瞭だということにあると思う。もちろん、様々な組手法には、それなりの目的と方向性はあるかもしれない。だが、私が述べる戦いの理法(戦術論)を理解するためには、「従来の組手法を見直す」という視点が必要だ、ということをあらかじめ伝えておきたい。今回、どのような組手法が良いか、という論に関しては展開しない。ただし、私の提唱する拓心武道の組手法においては、目先の勝負に勝利することを目的とはしないということだけは断っておきたい。

 では、増田武道メソッドである拓心武道における組手の意義とは何か?それは武術の技法の活用並びにその技能習得を通じ、道を追求することだ、と言っても良い。また、道(真・善・美を顕す理法)に出会い、かつ、道の追求(修行)を人格陶冶・人間完成の道に生かしめることである。ゆえに、私の道場における組手修練は畢竟、チャンピオンシップ(競技大会)のためにあるのではない。また、私の道場は、極真空手の基本を伝えてはいるが、競技法を伝えることが目的ではない。あえて言えば、極真空手がより高い次元で社会貢献できるように、その思想と技法、また修練法を進化させることである。そのように言えば、不遜な考えだと、諸先輩の方々にお叱りを受けるだろう。しかしながら、天に在る、先師だけには認めていただけるよう、私は命懸けで修行を続けている。

【命中の可能性がわずかしかない箇所への攻撃】
 

 話を戻して、攻撃の基本としては、命中の可能性のより高い箇所への攻撃だ。だが、先述したように、攻防が交差する組手・仕合にあっては、命中の可能性がわずかしかない箇所への攻撃を行うことがほとんどである、という現実がある。
 例えば、命中の可能性が高く感じるという、自分自身の認知が、必ずしも正しいとは限らないからだ。例えば、自分の狙い定めた攻撃目標が、相手に予測され、かつ万全の反撃態勢が準備されていることがある。本当の強者とはそのような者だと思うが、そのような者との対戦は、基本原則を踏まえながらも、相手の手の内を探りつつ戦うことが必要になるはずである。ゆえに、相手を陽動し、手の内を見定め、かつ崩し、より命中の可能性の高い箇所を動きの中、変化の流れの中で生じさせるという技能が必要だ。

【基本技術と技能の関係】

 ここで理解してほしい事がある。それは基本技術と技能の関係である。要するに、高度な戦術を実行するための必要条件として精度の高い技術があるということ。そして、高い技術による成果をもたらすための十分条件として、高い技能があるということである(ほとんどの武道家が理解していないと思う)。ゆえに武道修練とは、本来、型(組手型)稽古と仕合稽古の両方がなければならない。
 ゆえに拓心武道メソッドでは、防具を着用し、かつ防御技の基本と応じ技の型(組手型)を重視し指導する。その上で組手・仕合を行う事が必要だと私は考えている。例えれば、柔道の修練における重要な基本が「受け身」であり、その上で「乱取り(組手)」の修練を行うのと同様と言っても良い。拓心武道では、必ず防御技術の習得をまず行ってから組手稽古を行う。そうでなければ、基本稽古や組手型稽古で体得した技術を様々な局面、そして流れの中で生かすための稽古・修練とはならない。言い換えれば、高いレベルでの応用力の体得を目標とするからこそ、徹底した基本技術(攻撃技のみならず防御技)の習得とその精度が必要だと理解できるのだ。また、さまざまな実験的な経験を積むことにより、自らの認知能力の未熟、曖昧さをき是正(更新し)し、かつ高めていくことができる。そして、それが私のいう武道修行でもある。

【組手・仕合の修練とは】

 まとめれば、組手・仕合の修練とは、徹底した基本技術と原則の実践と同時にその応用の実践である。言い換えれば、組手・仕合の目的とは、自らの武技(技術)の精度を高めることと同時に武技の活用スキルを高める修練だ、と言っても良い。ただし、そこに道の追求という視座を確立したいと私は考えている。ゆえに、これまで普及を目的に、チャンピオンシップ(競技大会)という手段を用い、結果、娯楽性を持ち込んだことに反省を促したい。もちろん、チャンピオンシップを全否定するわけではない。そのようなことも有意義であろう。だが私は、本来の道の追求としての武道の原点に立ち戻り、空手武道に人格陶冶の修行としての価値を付与したい、と考えているだけだ。


【他の競技に当てはめる】

 最後に蛇足ながら、拓心武術の戦術理論である「組手において攻撃目標(ヒットポイント)は絶えず変化している」ということをスポーツ競技にも当てはめることができると思う。例えば、サッカーやラグビー競技における、ボールを回す「スペース」とは、空手における「ヒットポイント」と同じと言っても良い。もちろんスポーツでは、相手に肉体的なダメージを与えることはしないが、最終目的(制圧・攻略・ゴール)としては共通点を見出すことができる。つまり、自他双方の攻防という状況において、相手の抵抗を制し、相手を技能的に制するという点では同じだ、と私は思う。

 すなわち、相手と自己の配置や状態によって、絶えず変化し動いている「スペース」にボールを回すことと「ヒットポイント」に打撃技を繰り出す感覚は同じだと思うのだ。
 補足すれば、ヒットポイントへの攻撃は、相手の完全な制圧・攻略に繋がっていなければならない。同様に、サッカーやラグビーの場合、スペースへのパスはゴールに繋がっていなければならない、と私は考えている。

 

 

昇段審査の保留者の合格のお知らせ

  • 昇段審査に保留となっていた上原氏の合格を認定いたしました。めでとうございます。今後に関しては事務局にお問い合わせください。

 

第12回 月例試合の報告

 

試合動画&参加者のコメント(新春付録)

 

2021年月例試合 修練記録の発表

  • 戦績並びに参加数の上位3名にはTSクーポン(1000円分)を進呈します(事務局に問い合わせてください)
  • PDF版

特集:鈴木智(高田馬場・壮年部)の組手上達の記録

 

増田より

   前回、TS方式の組手試合で平尾氏に完敗を喫した鈴木 智氏が、半年の努力の結果、平尾氏に完勝しました。鈴木氏は初めての試合、平尾氏に手も足もでませんでした。完敗です。今後、鈴木氏は自信を喪失し、試合に出てこないのではないか、と私は心配していました。

 しかし、鈴木氏は積極的でした。それでも、対戦相手の平尾氏は試合経験が豊富です。私は鈴木氏の勝利を予想していませんでした。ところが、試合は鈴木氏の完勝でした。平尾氏の調子が悪かったのかもしれません。否、鈴木氏は組手の要点を掴んでいたのです。

 思い起こせば、年末の紅白試合で、私はす鈴木氏の組手を褒めたことを思い出しました。はっきりとは思い出せませんが、鈴木氏の間合いの取り方、攻撃のタイミングが良くなっていたのです。今回、私はとてもうれしく思いました。なぜなら、本来、不器用な部類だが、真面目が取り柄の鈴木氏に、私の考案した組手法(拓心武道メソッド)の効果が現れたのです。

 本号では、上達できないと思っている人。試合に勝てないと思っている人に、「大丈夫、やれば必ずできるようになる」と伝えたく、5ヶ月前の試合映像と5ヶ月後の試合映像をアップておきます。

 最後に繰り返します。TS方式は拓心武術・独自の防御技術を習得すれば、誰もが上達できると思います。

5ヶ月前の試合〜平尾氏の完勝、鈴木氏の完敗

5ヶ月後の試合〜平尾氏の完敗、鈴木氏の完勝

 

2022年1、2月のイベント予定

  • 1月16日(日) 組手修練会(定員あり/募集は締め切りました)
  • 1月39日(日) 第13回 月例試合(募集中)
  • 2月20日(日) 昇級審査
  • 2月27日(日) 第14回 月例試合

重要なお知らせ

  • デジタル空手武道教本は、不定期にコンテンツを修正、補充(アップロード)していきます。道場稽古の予習、復習に活用してください。
  • IBMA空手武道チャンネルには「自宅でできる空手武道レッスン」を掲載しています。参考にしてください。
  • IBMA極真会館の重要なお知らせは、メールでお知らせしています。会員道場生はメール登録をお願いします。
  • デジタル空手武道教本はIBMA極真会館の会員道場生向けの教本です。閲覧にはPWが必要です。一斉メールでお知らせしていますので、必ずメモしておいてください。もし、忘れた場合は、事務局までお問い合わせください
  • 極真会館増田道場生の皆さんへ〜年会費(半期分)を納入された方には1000円分のTSクーポンが発行されています。TSショップでの修練用具の購入にお使いください(TSクーポンの有効期限は発行日から1年間です︎/新規入会者は除く)→TSショップはこちら
  • セキュリティー管理のため、デジタル空手武道教本の閲覧のためのPWは定期的に変更されます。連絡用メールアドレスを本部事務局までお知らください。登録のない方には道場からの連絡が届きません。

 

 

第56号 編集後記

 昨年末は26日に月例試合で締めくくった。参加者は少なかったが、参加者の上達が見られた。私にとってはそのことが何より嬉しいことである。

 2021年は1年間、コロナ下でも毎月1回、月例試合を続けた。私達にできること、わずかでも進化しようと思ったからである。その思いにお付き合いいただいた増田道場生には、感謝の言葉では片付けられない、と思っている。その感謝を表すためにも、私の空手武道理論を完成させたい。

 本年、2022年は、新しい組手法を進化させるのみならず、10数年前から構想していた「護身技」の修練をスタートさせたい。

 断っておくが、護身技の修練を難しく考えないでほしい。私を含め、黒帯一同が、空手武道の価値をより高めていくために、原点に立ち戻り、かつ新たな第一歩、新たなアプローチを試みるだけだ。今、新たなアプローチの実践は有意義なものとなる、との手応えがある。断っておくが、新たなアプローチとは、これまでのあり方を否定するのではなく、活かすための行動だ。

 すなわち、極真空手をいかす。そのためには、手技による頭部攻撃、また投げ技や逆技、獲物(小武器)への対応に関する理解は必須である。

 私も含め、人間が過去の習慣に安住したい気持ちはわかる。だが絶対視することは可能性の放棄と言っても良いだろう。私は、絶えず今をよりよく生きるために、これまでの認識を掘り下げ、かつ必要とあらば、自己の認識を更新する。一方、原理や主義を絶対化し、人に強制することは、一人ひとりの心を高め、身体の可能性を拓いていく、私の武道哲学とは相容れない。

 やはり、いかなる時代、いかなる分野においても、自己の他者に対する貢献を考える事が重要だと思う。換言すれば、自己を公共化することだと思う。そのためにも武術を淵源とする空手武道の原点に立ち戻り、その修練の効用を人格陶冶・人間完成の武道として再構築していきたい。

 最後に、こんなことを書きたくないが、私の身体はみなさんが思っているほど強くはない。もうそろそろ限界に達するに違いない。だからこそ、今まで以上に時間を大切にしたい。そして命をかけても理想の空手武道を完成させたい。問題は私のコミュニケーション能力が未熟で、皆さんと歩調を合わせるのがうまくないことである。

 今年も私自身の未熟を自覚しながら、我が増田道場の黒帯有志と力を合わせ、道場生の誇り、生き甲斐となるような空手武道を共に創っていきたい。

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